摂食・嚥下指導訓練施設とは?
「食事を口から摂取すること」これは,人間が生命を維持する最も根源的な方法です。常日頃,健常人は当たり前のようにこの事を行っていますが,実は,神経・口腔(歯や舌)・咽頭・食道・胃が中枢神経(脳)の高度な制御により,非常に複雑なメカニズムで動くことで実現します。
従って脳の障害(脳内出血・脳梗塞),高齢による機能の低下,口腔内・消化管の問題で,経口摂取(食事を口からとること)が困難となることがあります。そうすると,誤嚥性肺炎を併発したり,低栄養となったり,寝たきり状態になり褥創ができる等の問題が生じます。これを何とか「正常な状態に近づける」もしくは「経口摂取は無理でも、何とか胃腸を使った栄養摂取が出来るようにする」ことを目標に掲げている施設が「摂食・嚥下指導訓練施設」です。
PEGドクターズネットワークに登録されている「摂食・嚥下指導訓練施設」は全国で191施設,茨城県内では当病院を含めて7施設です。
当病院では小豆畑丈夫院長,康祐大医師が中心となって,診断及び治療を行っております。
嚥下内視鏡検査とは?

近年、摂食・嚥下障害に関する知識は広く浸透してきており,食前に嚥下体操を取り入れるなど,何らかの対応をとっている入居施設が増えてきています。
しかしながら,不適切な食形態が原因でむせながら食べているのに対して,食形態の変更を考慮せずに嚥下訓練を行っている場合や,明らかに食事が可能なレベルと考えられるのに何の訓練も行わず胃瘻のみの栄養摂取を行っているなど,摂食・嚥下機能と栄養摂取方法が大きくかけはなれていることが少なくありません。
その乖離を防ぐことに重点を置き,状態に応じた訓練を考えた場合に嚥下機能検査を行うことはとても重要なことです。
「嚥下内視鏡検査」とは,嚥下機能検査のなかでも,特に有用な検査方法です。鼻の中から嚥下時の咽頭・喉頭を観察することで,食事摂取の状態を確認することが出来ます。
「嚥下内視鏡検査」では,レントゲンによる造影に比べ造影剤が必要無いため,普段食べている食品でそのまま検食できる他,被爆を伴わないため長時間の観察・検査が可能です。
また,現在の状態を画像で医師と患者様が一緒に確認することも可能なので,訓練のモチベーション向上にも繋がります。
当病院では,「嚥下内視鏡検査」を用い適切な訓練を行うことで,より多くの患者様に「食事を口から食べられる」ことができるように日々努力しています。
当病院の嚥下内視鏡検査について
- 嚥下内視鏡検査は毎週金曜日となります。
- 完全予約(事前の電話予約)とさせて頂きます。
NSTとは?

NSTは「Nutrition Support Team」の略称であり、日本では「栄養サポートチーム」と呼ばれています。
1970年にアメリカで始まりましたが、日本ではなかなか浸透しにくく少し前までは、認知度が低い存在でした。近年においては、日本でも徐々に浸透しつつあり、病院内での医療チーム活動が注目を浴びてきています。
NSTは、外科・内科・整形外科…等,たて割りの診療概念とは全く異なり、横断的に全ての患者様の栄養状態評価・対策を検討していきます。
当病院ではNSTのミーティングの中で,嚥下・摂食・栄養に問題のある全ての患者様の治療方針を決定しています。NSTのメンバーは医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・作業療法士で構成されております。
摂食・嚥下リハビリテーションとは?
当病院では,誤嚥性肺炎・窒息・低栄養・脱水などの医学的リスクを軽減し,安全な食事や栄養摂取スタイルが確立できるよう,評価およびリハビリテーション(以下リハビリ)を実施しています。
評価方法については,言語聴覚士による「水飲みテスト」や「フードテスト」のほか,必要に応じて医師により嚥下内視鏡検査を行います。これらの結果を元に「食べ物を用いない間接(基礎)訓練」や「食べ物を用いる直接(摂食)訓練」,食形態の検討や,姿勢・食べ方・介助方法の指導,といったリハビリが行われます。
摂食・嚥下障害は,食事中にむせることだけがそのサインではありません。食事中や食後に声がガラガラになる,痰がからむなどの症状や,寝ているときにむせる,最近食欲がない,体重が減ってきた・・・なども,摂食・嚥下障害,誤嚥を疑うサインのひとつでもあります。
ご本人様,ご家族様で気になる症状がありましたら当病院へご相談ください。
〈口腔ケアについて〉

摂食・嚥下障害により,唾液や逆流した胃液と共に,細菌が肺に流れ込んで肺炎を起こしてしまうことを誤嚥性肺炎といいます。高齢者に多く発症し、生命に関わることも少なくありません。
しかし近年,口腔ケアによる予防の有効性が明らかになってきています。口腔ケアを行うことで口腔内の細菌の数を減少させるだけでなく,口や舌の動きが良くなり摂食・嚥下障害の改善が促されます。
また,口腔ケアにより口臭が減ることやことばがはっきりすることでコミュニケーション機会の増加も期待できます。入れ歯の調整などによるきちんとしたかみ合わせは,食事のためだけでなく身体のバランスを保つためにも重要です。
このように,口腔ケアとは口腔衛生の改善だけでなく,口腔機能の回復のためのリハビリも含まれ誤嚥性肺炎の予防,全身の健康の保持増進,生活の質(QOL)の向上を促します。
口から食べていない方,歯がない方であっても,唾液や痰,分泌物に細菌などがついて繁殖し驚くほど口の中は汚れてしまいます。当病院では,歯科医師の指導の下,看護師,介護士,言語聴覚士が連携し,全ての患者様に口腔ケアを実践しています。
PEG・PTEGについて
PEG(内視鏡的胃瘻)とは?

何らかの原因で口から直接食事を摂ることが出来なくなった場合の栄養投与方法の1つです。
具体的には,内視鏡(つまり胃カメラ)を使って、直接「胃」に穴を開けて,これを「新しい口」としてチューブを通して,食事を摂ってもらう方法です。
〈利点〉
- 1日3回,食事をしたように胃袋や腸が動くので生理的であり,場合によっては家族と同じものを流動状態にして食べられます。
- 他の栄養法(中心静脈栄養、経鼻胃管等)に比べて,敗血症や反復性肺炎の可能性が大きく低下します。
- PEG在宅医療研究会の研究では,他の栄養法(中心静脈栄養や経鼻胃管)に比べ,PEG栄養をされている患者さんの方が明らかに長生をすることが分かりました。
〈PEG造設上の条件・注意点〉
- 内視鏡を行える条件にあり,胃全摘を受けていない方。
- 胃の手術をしておられる方は適応でない場合があります。
- 胃や腸の動きに問題がない方。
- 合併症による禁忌の無い方。
* 症例によって条件は異なります。
〈ご家族からよくあるご質問〉
PTEG(経皮経食道胃管挿入術)とは?

「胃切除後」や「食道裂孔ヘルニア」等の理由でPEG(内視鏡的胃瘻)が造設できない場合があります。
このような場合に,左頚部の食道内で膨らませた特殊バルーンを超音波下に穿刺し,そのバルーン内に挿入したガイドワイアをレントゲン透視下に残胃もしくは小腸内に進め,それを利用して頚部から胃の中にチューブを挿入する方法です。
PEGとの大きな違いは,内視鏡を使わない点です。
〈利点〉
- PEGの行えない症例でも行える場合が多い。
- PEGに比べて造設後の管理がしやすい。
〈注意点〉
- 管のサイズが細く,頚部から40cm程の長さが必要になるので薬剤注入後に閉塞し易く十分なフラッシュが必要。
- 頚部の重要血管や甲状腺の誤穿刺等の合併症もありえる。
- 造設時間がPEGの7分程度に比べ40分前後と時間を要する。
*上記の注意点があるとは言え,PTEGが非常に有効な経管栄養法である事には間違いありません。特に近年高齢化が進み、食道裂孔ヘルニアの症例増加と昭和30年代~40年代に潰瘍の主治療法が胃切除だった頃に同手術を受けた方が,脳出血や脳梗塞の好発年齢になってきている事等から,今後のPTEGの適応症例は増加するものと思われます。
